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種苗法改正に対する自民党Q&Aの問題点

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種苗法改正に対する自民党Q&Aの問題点

 

 

 

 

 

 

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Matsudaira NaoyaさんからRT

 

まもなく国会審議が始まるとされる種苗法改正に対して自民党がこのタイミングでQ&Aを作成した。

農業関係者からの疑問の声や地方議会への陳情など市民社会から批判の声の高まりを受けての対応だろうか。日本農業新聞にその内容が掲載されたのでその問題点について(☆)で記事内に記す(記事より長いので注意)。

(ただし自民党Q&Aは、ウエッブに掲載されていないため本日確認します。農繁期なので誤字脱字お許しを)

種苗法改正種子法廃止 自家増殖禁止?→在来種は自由に 自民がQ&A作成 日本農業新聞 2020年04月06日

今国会での種苗法改正案の審議に先立ち、自民党がQ&A集を作成した。自家増殖を許諾制にすることなどへの懸念を受けたもので、許諾が必要なのは登録品種に限られ、許諾料も低額であることなどを説明する。主要農作物種子法(種子法)の廃止についても、海外企業に種子が支配されることはないと説明する。

(☆0:自家増殖の許諾制とは、種苗の育成権者に金銭を支払い利用の許諾を得ることを意味する。この制度自体が、多様な農家の自家増殖行動を抑制し、農民の種子への権利を制限し、持続可能な農業への道を閉ざす可能性がある(西川2019)。農家として問題に感じるのは、海外企業に種子の支配はもちろんだが、種苗の知的財産権を強化による農民の種子への権利の制限である。

日本は種子について2つの国際条約に加盟している。一つは「植物の新品種の保護に関する国際条約(UPOV)」という国際的な知的財産権強化を目指す条約であり、もう一つは、「食料・農業植物遺伝資源条約(ITPGR)」という条約である。そこでは食料や農業の植物遺伝資源である農作物のタネは、農民により保全・改良されてきたことから農民の種子への権利が明記されまた農民の政策への参加が謳われている。

今回、種苗法改正は、種子法廃止時の際のように拙速に国会で審議される可能性があるが、まずは国際条約に則り、種苗に関する法律の改正は農民当事者も参加させ議論するべきである。)

生産者の懸念解消へ

種苗法改正案では、農家が収穫物の一部を次期作の種苗に使う自家増殖を、育成者権者の了解が必要な許諾制とする。

(☆1:許諾制については種苗価格高騰による農家への負担が及ぶ可能性があり批判の声が高まっている。さらに農水省は、許諾制は現場に丸投げで種苗会社や農家に混乱が起こっている(現代農業2020年4月号)。(改正案は21年から施行が目指されるが許諾制は混乱を見越して22年度から開始とされる)。改正案策定過程(農林水産省2019)では、農協の委員から自家増殖を今まで通り認めて欲しい、多様な農家が存在する中で許諾料をとることは可能なのかと疑問が呈された。自民党は許諾料が低額だと主張するが基準も根拠も示されていない。これでは農家が不安に思っても仕方ない。)

「自家増殖は一律禁止になるか」との質問に、「禁止ではない」とし、対象は登録品種だけと回答。在来種など登録品種以外の品種が、米では84%、野菜では91%を占め、これらは「従来と同様に自由に自家増殖が可能」と説明する。

(☆2:近年、農水省が定める「自家増殖禁止の品目」は、2016年の82種から2019年には387種まで急拡大し、さらに登録品種が全くない野菜(ニンジン・ホウレンソウ)や果樹も対象に含まれるようになった。また農水省は今後も対象品目を増やしていく意向を示している(現代農業2018年4月号)。

1978年には、農家の自家増殖の慣行に配慮し、対象品目は、栄養繁殖の植物であるキク等の花卉類とバラ等の鑑賞樹に限られていたが(大川2018)、近年は野菜などの対象品目が増えている。もちろん登録品種以外の一般品種の自家増殖は可能だが、上記の状況から自家増殖一律禁止の方向と受け止められても仕方が無いといえるのではないか。)

「自家増殖が許諾制になると、生産コストや事務負担の増加につながるのでは」との質問には、一部の登録品種では許諾料の発生も想定されると回答する。

ただ、ある県の稲は10アール3円、別の県のブドウ苗木で1本60円程度と低額であることを例示。農家の過度な負担とならないよう、団体でまとめて許諾を受けられることも紹介する。

(☆3:団体を通さない個人農家向けにはどうなるのか。改正案では全く言及がないため農家に不安が広がる。低額の見通しの根拠はこれまでの議論で示されていない。そもそも種苗の育成権者が行政関係であるか企業であるかで許諾料に関する考え方は大きく異なるため価格値上げの不安払拭にはならない。例えばEUでも許諾制が採用されているが、小規模農家向けには許諾料支払い免除が規定されている。最低限農家の規模や形態をふまえて制度構築を行う必要があるのではないか)

2018年の種子法廃止についても、生産現場の懸念を踏まえてQ&Aを作成。「海外企業に種子が支配されるのではないか」との質問には、もともと種子法に海外企業の参入に関する定めが一切なく、「懸念は当たらない」とする。

(☆4:種子法廃止においては、これまで種子法で培われてきた遺伝資源を民間に開放するのではなかったか。「農業競争力強化支援法」の8条の4項では「種子その他の種苗について、民間事業者が行う技術開発及び新品種の育成その他の種苗の生産及び供給を促進するとともに、独立行政法人の試験研究機関及び都道府県が有する種苗の生産に関する知見の民間事業者への提供を促進すること」が謳われている。)

「地方交付税措置の根拠がなくなり、都道府県の種子供給業務の予算が打ち切られないか」との質問には、法廃止後も引き続き、同業務に必要な費用が地方交付税の算定根拠になっており、廃止前と同様に措置されていると回答した。
(☆5:民間に移行すればそうした措置もなくなるということではなかったか)

(参照文献)

大川雅央「人類の生存、農作物の多様性のために、『農民の権利』を育みたい」『季刊地域』2018,SPRING、75-79頁
http://www.ruralnet.or.jp/s_igi/image/c33_01.pdf

大川雅央「ITPGRと農民の権利」『現代農業』308-311頁、2020年2月号
西川 芳昭(2019)「持続可能な種子の管理を考える―権利概念に基づく国際的枠組みと農の営みに基づく実践を繋ぐ可能性―」『国際開発研究』28 巻 1 号、 53-69頁

農林水産省「第6回 優良品種の持続的な利用を可能とする植物新品種の保護に関する検討会議事概要」2019年11月

現代農業編集部「種苗法 農水省の有識者会議で話し合われていること」『現代農業』2020年2月号、312-315頁
現代農業編集部「農水省にも種苗業界にも話を聞いたけどやっぱり『農家の自家増殖に原則禁止』に異議あり !」『現代農業』2018年4月号、280-289頁

 

 

 

 

 

 

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