日本の情報統制、恐ろしいものである
印鑰 智哉さんから
モンサント(現バイエル)の農薬ラウンドアップ(主成分グリホサート)を抱えるバイエルはまさに断末魔の様相を示している。
でも、日本では真逆、ラウンドアップ安定の大セール中(ニッポンすごい?!)。
ラウンドアップに対する訴訟は増え続け、米国では訴訟件数は17万を越している。そのうち10万件超は和解に至っているが、その和解金は約110億ドル(約1.6兆円)に達しており、まだ和解していない訴訟も6万7000件、残っており、まだ増えつつある¹。
米国内だけではない。カナダでも集団訴訟が進みつつある²。またEUでは、対象はグリホサートの再承認を認めた欧州委員会を市民団体が欧州裁判所に訴えた³。
法廷で現在争われているのは発がん性をめぐってが対象だが、ラウンドアップ/グリホサートが与える健康被害はそれ以外の広範な症状に及んでおり、これは氷山の一角に過ぎないだろう。
2018年、フランスでラウンドアップによって子どもが先天性欠損症になったとして、両親がバイエルを訴え、その公判が今年3月に開かれた⁴。これはラウンドアップによる先天性欠損症に関する世界で最初の裁判である。
グリホサートには遺伝子毒性があると言われ、遺伝子の発現にも異常を来すことが指摘されている。DNAメチル化変異をグリホサートがもたらすことで、世代を超えて健康影響を及ぼす可能性はこれまでの研究でも指摘されてきた。親には現れていない影響が子や孫に現れる可能性がある。それが法廷でも問われる事態になった。
子宮内膜症、生殖能力の減少、妊娠期間の短縮化などにもグリホサートが影響している可能性もすでに指摘されている⁵。
また、慢性肝疾患の急増もグリホサートの使用と関わっているとする研究も増えており、もし、それが証明されれば、さらに膨大な数の被害者とバイエルは向き合わなければならない事態になるだろう⁶。
この事態に対して、バイエルは米国で反撃に出た。米国が承認した農薬を州など地方自治体が規制することを禁止する農業法案を成立させ、被害者がバイエルなどの農薬企業を訴えることをできなくするというものだ。
すでに21州でその法案に向けた動きがあり、ノースダコタ州、ジョージア州で成立してしまったものの、アイオワ州、モンタナ州、ワイオミング州、ミシシッピ州、オクラホマ州、アイダホ州、テネシー州、フロリダ州の8州では廃案になっている⁷。モンサント時代の政治力でバイエルは訴訟を禁止すれば太刀打ちできると考えたのかもしれないが、それすら覚束ないのが現実のようだ。
バイエルは裁判の過程で、グリホサートを個人向け販売からは撤退させることを2023年に約束した。裁判所から発がん性を表示するように求められたが、それに対してバイエルはグリホサートの一般販売をやめるといって拒否したのだ。
その後、バイエルは米国で個人向け販売用のラウンドアップからグリホサートを抜いたというが、環境団体が検査したら、確かにそのブランド名で売られる8つの製品からはグリホサートは検出されなかった。
しかし、その代わりに使われていたのは4種類の化学物質(フルアジホップ-P-ブチル、トリクロピル、ジクワットジブロミド、イマザピック)で、その毒性はむしろ、以前よりも45倍も強いという評価になった⁸。
米国スーパーのコストコはラウンドアップの発がん性の指摘を受けて、販売を中止した。しかし、現在は再開している。でも、それは45倍も強毒化したラウンドアップの販売ということで、販売を止めるキャンペーンが開始されている⁹。
今、バイエルは、モンサントの事業を破産手続きをするということもちらつかせているようだ。もしそうなれば家庭用だけでなく、農業用含めて、ラウンドアップの販売は米国では止まるのかもしれない。
ただ、これは本当にモンサント事業を終わらせるということではなく、「ラウンドアップを作らなくなったら困るだろ」という脅しのつもりなのかもしれない¹⁰。
バイエルの株価はモンサント買収以降、低迷が続き、裁判も長期化し、裁判の無効化の試みも失敗し、いよいよ出口がなくなってきた。
しかし、日本ではまったく様相が違う。
日本ではラウンドアップはホームセンターで常に大セール中であり、ラウンドアップの販売権を持つ日産化学が、ラウンドアップの危険性をSNSなどに書くと、製品への誹謗中傷であるとして、その投稿者を裁判に訴えると圧力をかける¹¹。
日本のマスコミがラウンドアップの問題について報道することもほとんどなく、今日もラウンドアップのコマーシャルがテレビを流れているだろう。
だから、この世界でラウンドアップをめぐって起きているニュースを日本語圏の人はほとんど知る機会がないのが現実だ。日本だけ世界で流れるラウンドアップに関する情報からは完全に取り残される。
日本の情報統制、恐ろしいものである。
(1) Monsanto Roundup Lawsuit Update
https://www.lawsuit-information-center.com/roundup…
(2) Glyphosate class action moves forward in Canada
https://www.producer.com/…/glyphosate-class-action…/
(3) The Great Glyphosate Court Case
https://www.pan-europe.info/great-glyphosate-court-case
Stop Glyphosate
https://stopglyphosate.eu/
(4) French parents sue Bayer over glyphosate birth defects in their son
https://www.rfi.fr/…/20250403-french-parents-sue-bayer…
(5) Findings Show Endocrine-Disrupting Glyphosate Weed Killer Threatens Women’s Reproductive Health
https://beyondpesticides.org/…/findings-show-endocrine…/
(6) Common weedkiller glyphosate may be linked to liver disease epidemic, study warns
https://usrtk.org/…/glyphosate-linked-to-liver-disease…/
(7) The pesticide immunity bill is dead—we hope
https://www.bleedingheartland.com/…/the-pesticide…/
Bayer’s Effort to Block Roundup Lawsuits Kicks Into High Gear
https://civileats.com/…/bayers-effort-to-block-roundup…/
No impunity for agrochemical corporations
Open Letter to Bayer’s shareholders
https://corporateeurope.org/…/no-impunity-agrochemical…
Call to Bayer shareholders: Stop the attack on health and environment protection
https://www.pan-europe.info/…/call-bayer-shareholders…
(添付写真はこのページから。Bayerの株主総会に100以上の団体が公開書簡を送り、法案への関与をやめよと声を上げた)
Failure-to-Warn
https://www.beyondpesticides.org/resources/failure-to-warn
(8) ‘Outrageous’: New Roundup Is 45 Times More Toxic
https://www.commondreams.org/news/new-roundup-more-toxic
この措置は米国内のみで、日本のラウンドアップは以前と同じグリホサートベースのものであろう。
米国で販売されているラウンドアップすべてからグリホサートがなくなったわけではなく、7つの製品には以前として使われている。
(9) Costco Stopped Selling Glyphosate, Still Selling Roundup—With a “45 Times More Toxic” Formula
https://organicconsumers.org/costco-stopped-selling…/
(10) Bayer Seeks New Roundup Settlement While Exploring Monsanto Bankruptcy
https://www.msn.com/…/bayer-seeks-new…/ar-AA1ERE1l…
(11) 【公式】ラウンドアップマックスロード製品の安全性
https://x.com/nissanchem_rup/status/1910603727385329903
https://x.com/nissanchem_rup
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