
タネは人間ごときが制御でるものではない

·
政府が来年通常国会に提出予定の種苗法再改訂案の概要がわかったと、日本農業新聞が伝えている。2020年に22年ぶりに改正したばかりの種苗法をわずか5年で再改正するその意図は以前も書いたけれども、さらなる種苗のグローバリゼーションを強化するものだと言えるだろう。
2020年の改正では、海外流出防止が前面に出た法改正になった。
でも、海外市場に門戸を閉ざしていたら、縮小を続ける国内市場だけでは、日本の種苗セクターは止まってしまう。
だからこそ、今回の種苗法改正は日本の種苗の輸出を可能にさせることに大きな比重があると考えられる。
また、政府は種苗法改正だけでなく、新品種の開発や種苗の生産振興を後押しする新法法案を提出予定だという。
来年度の農水省の概算要求には種苗の生産振興向けの予算がついたのだが、これは何だろうと思っていたのだけど、新法に伴う予算措置なのだろうか。
もっとも成立していない法律に予算措置というのは早すぎる気もするが。
来年は世界で種苗法問題の嵐が荒れ狂う年になりそうだ。
アフリカでは種苗法を改正し、遺伝子組み換え作物の栽培を強制する動きが相次いだ。
そしてインドネシアでもマレーシアでも種苗法改正が予想されている。
世界各地の農民のタネを奪って、少数のグローバルなタネを押しつけ、より農民をグローバルな競争に追い込み、農民は疲弊し、種子メジャーがさらに利益を独占し、そして地域の食文化は失われていく、というシナリオが見えてくる。
でも、そのシナリオを止めようという動きは世界ですでに動き出している。
ケニアでは2012年に制定された種苗法が憲法に違反するという判決が先日出たばかりだ。
そして、常設民衆法廷もこのタネの権利を奪うことを人類に対する犯罪として動き始めている。
来年1月末にはインドネシアで、日本政府が圧力をかける種苗法改正とUPOV1991年条約の強制問題に関する会議が開かれる。
さて、問題なのはこの動きを世界でもっとも強行に進めている政府が日本であるということだ。
この問題をどう受け止めるべきか、問われている。
私たちの生存がタネから始まることを考えれば、このままなすがまま、このプロセスを進めさせることはできないはずだ。
地域のタネ、コモンとしてのタネをどう生かせる政治に変えさせるか、議論が必要だ。
日本農業新聞
(いささか、この記事の見出しはミスリーディングではないか? 海外流出防止は2020年の目玉。同じことの繰り返しではないはず。今回の法改正の要点は育成者権の有効期間を長くし、品種登録前でも、無断使用を差し止められる仕組みも作るとしているが、それだけではないだろう)

コメント