「ゲノム編集」技術に食料問題を解決することは期待できない

印鑰 智哉さんから
「ゲノム編集」技術には、食料問題を解決することは期待できず、問題だらけの食のシステムの延命策くらいしかできないのだろうと思う。
遺伝子研究ではなくてはならない技術になっているし、研究室の中だけに限れば、有用性は高いが、だからといって、「ゲノム編集」した生命を環境中に出していいということにはならない。核エネルギーと同じ事。
米国FDA(食品医薬品局)は「ゲノム編集」で豚繁殖・呼吸障害症候群 (porcine reproductive and respiratory syndrome, PRRS)耐性にした豚にゴーサイン。PRRSとはウイルスによる感染症なのだが、呼吸困難をきたして酸欠状態になり、耳が青くなるのでブルーイヤ病とも言われる深刻な症状をもたらす。妊娠した豚が感染すると生殖にも影響が出る。
そのPRRSウイルスが取りつく遺伝子を「ゲノム編集」で破壊してしまえば、その豚にはそのウイルスはとりつかない、というわけだ。でも、素人考えだけど、そのウイルスが変異してしまって、別の部分にとりつくようになったら、無意味になるのでは? そうなったらその部分も壊してしまう? 豚熱もある。新しい感染症ができるたびに遺伝子を壊すのではブロック崩しゲームみたいにならないか? 積んであるブロックを崩さないように一つ一つ引き合うするゲーム。崩した方が負け。それを遺伝子でやるようなものではないか? とても罪深いゲームに見える。いつか崩壊するように思えてならない。
そもそも今、家畜の感染症がひどくなっている。家畜を工場のように詰め込んでストレスのある環境で育てるから、感染症に弱くなる。そんな環境、ファクトリーファーミングで肉を作ることをやめれば、こんな感染症にかかる可能性もぐっと減るはずだ。そもそもファクトリーファーミングをやめなければならないのに、それをやめずに続けるために「ゲノム編集」を持ち込む、つまりファクトリーファーミングの延命のために「ゲノム編集」が使われている。
そもそもこの「ゲノム編集」豚は誰が食べるのだろう? この肉は来年にも市場に出てくると言われているが、米国ではファクトリーファーミングに対する批判が大きく、中でも抗生物質や成長ホルモンを使った牛を消費者は忌避している。スーパーに行くと、抗生物質フリー、成長ホルモンフリーのラベルを貼った肉がずらりと並んでいる。だから米国内ではそうした肉は不人気であまり売れない。そうした肉は日本などに輸出される。となると、この「ゲノム編集」豚も米国ではさほど売れず、日本市場で売ろうとするのは目に見えているのではないか? だいたい、日本では米国から輸入される肉がどうやって作られているかなんて、ほとんど知られていないから。もっとも日本での流通の前に、消費者庁への届け出を求めるだろう。
日本が「ゲノム編集」食品の性急な規制緩和を決めたのはトランプ前政権の号令にわずか4ヶ月で従ったせいだった。今回も関税の脅しで、この「ゲノム編集」豚を輸入せよ、という要求も入ってくるかもしれない。いずれにしても米国からの肉はよほどのことがない限り、不買宣言、食べない宣言するに超したことはない。そして、何より、世界のどこであれ、ファクトリーファーミングを終わらせることだと思う。肉を食べない人もファクトリーファーミングで作られる抗生物質耐性菌の被害者になりかねないのだから。
動物の虐待をやめるためにもファクトリーファーミングに反対する国際的な連帯を強めていきたいものだ。




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